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行列式の定義と性質

2022-10-01

前回 \(2\) 次と \(3\) 次の正方行列に対する行列式を定義しました。ここではそれらの式の形を参考にし、一般の \(n\) 次の正方行列の行列式を定義しその性質を調べます。

\(n\) 次行列の行列式の定義

行列式と呼ばれるものに求められる様々な数学的性質を考慮すると、

2次の正方行列 \(A=\left( \begin{array}{cc} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \\ \end{array} \right)\) に対する行列式 \(\det(A)\)\[\det(A)=a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}\] と定義し、

3次の正方行列 \(A=\left( \begin{array}{ccc} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33}\\ \end{array} \right)\) に対する行列式 \(\det(A)\)

\[ \det(A)=a_{11}a_{22}a_{33}-a_{11}a_{21}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}-a_{31}a_{22}a_{31}\]

と定義するのが良いということを前回見てきました。

このことを参考にして、一般の \(n\) 次の正方行列に対して行列式を定義してみることにします。

成分の添字をよく観察して考えると…

行列 \(A\) の各成分が \(a_{ij}\) と書かれているとき、\(i\) は行番号をあらわし、 \(j\) は列番号をあらわしています。このことを思い出した上で、\(2\) 次と \(3\) 次の場合の行列式をよく観察してみましょう。

まず \(2\) 次の行列式

\[\det(A)=a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}\]

を見てみましょう。

すると \(a_{1s}a_{2t}\) という形の項が2個あり、どちらの項でも \(s,t\)\(1,2\) を並べ替えたものになっている

ということがわかります。

ところで、

\(1,2\) から \(s,t\) への並べ替えは \(2\) 次の置換 \(\left(\begin{array}{cc} 1&2\\ s&t \end{array}\right)\) として考えることができ、\(2\) 次の置換は2個あります。

また、

\(s,t\)\(1,2\) のときでも \(2,1\) のときでも、行列式の中の \(a_{1s}a_{2t}\) という項の前についている符号は置換 \(\left(\begin{array}{cc} 1&2\\ s&t \end{array}\right)\) の符号と一致しています。

今度は \(3\) 次の行列式

\[ \det(A)=a_{11}a_{22}a_{33}-a_{11}a_{21}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}-a_{31}a_{22}a_{31}\]

を見てみましょう。

\(a_{1s}a_{2t}a_{3u}\) という形の項が 6 個あり、\(s,t,u\)\(1,2,3\) を並べ替えたものになっています。

ところで、

\(1,2,3\) から \(s,t,u\) への並べ替えは \(3\) 次の置換 \(\left(\begin{array}{ccc} 1&2&3\\ s&t&u \end{array}\right)\) として考えることができ、\(3\) 次の置換は 6 個あります。

また、

\(s,t,u\) がどのような値のときも、行列式の中の \(a_{1s}a_{2t}a_{3u}\) という項の前についている符号は置換 \(\left(\begin{array}{ccc} 1&2&3\\ s&t&u \end{array}\right)\) の符号と一致しています。

このようなことに気づくと、一般の \(n\) 次行列 \(A\) の場合には、以下の手順で作られるものを行列式と定義すれば良いのではということになります。

  1. それぞれの \(n\) 次の置換

    \[ \sigma=\left(\begin{array}{cccc} 1&2&\cdots&n\\ \sigma(1)&\sigma(2)&\cdots&\sigma(n) \end{array}\right) \]

    に対して、 \(a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)}\) を作る。
  2. それぞれの \(a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)}\)\(\sigma\) の符号 \(\mathrm{sgn}(\sigma)\) を掛ける。
  3. 上記のようにして作られるものをすべて足す。

この手順を1つの式にまとめて書いたものが次の定義です。

定義

\(n\) 次の正方行列

\[ A=\left( \begin{array}{cccc} a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\ a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn } \end{array} \right) \]

に対して、

\[\det(A)=\sum_{\sigma \in S_n}\mathrm{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)} \tag{1}\\ \qquad\mathrm{ただしここで}\, S_n \,\mathrm{は}\,n\,\mathrm{次の置換の集合}\]

として作られる数を \(A\)行列式と定義します。

行列式の記号として、 \(\det(A)\) のほかに、\(|A|\)\(\begin{vmatrix} a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\ a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn } \end{vmatrix}\) のようにあらわすこともあります。


\(4\) 次の正方行列

\[ A=\left(\begin{array}{rrrr} 4 & 1 & -2 & 1\\ 3 & -3 & 2 & 5\\ 1 & -1 & 3 & -2\\ -2 & 3 & 3 & 1 \end{array}\right) \]

の行列式を定義に従って計算してみます。

\(4\) 次の置換は全部で \(4!\) 個、つまり \(24\) 個あるので行列式は \(24\) 個の項から成ることになります。

次のスライドでは、これら \(24\) 個の項を計算し、行列式への寄与として説明してあります。 それでは 24 枚のスライドを順に見てください。

行列式の値 \(\det(A)\) は上のスライドで計算されていた 24 個の行列式への寄与をすべて足すことにより求めることができるので、

\[ \begin{align} \det(A) &=-36-72+8-48-60-180\\ &\quad -9-18+2-8-15-30\\ &\quad\quad+6-36-6+24-30+20\\ &\quad\quad\quad+9+27-9-18-6+4\\ &=-481 \end{align} \]

であることがわかります。

補足:この例からもわかるように、行列式の値を定義に従って計算する場合、行列の次数が大きくなると計算すべき項の数は爆発的に増えていき、手計算で実行するのは困難になっていきます。

いつか、もう少しましな計算法(小さい次数の行列式に計算を帰着させる「行列式の展開」と呼ばれる方法)を紹介する予定です。

行列式の性質

行列式の定義の書き換えと転置行列

\(n\) 次の正方行列 \(A\) の行列式 \(\det(A)\) は 、\(n\) 次の置換の集合 \(S_n\) に属している置換 \(\sigma\) それぞれに対して決まる項

\[ \mathrm{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)} \]

たちの和として定義されました。

ところで、

\[\sigma=\left(\begin{array}{cccc} 1 & 2 &\cdots & n\\ \sigma(1) & \sigma(2) &\cdots &\sigma(n) \\ \end{array}\right)\]

\[\sigma=\left(\begin{array}{cccc} \sigma^{-1}(1) & \sigma^{-1}(2) &\cdots &\sigma^{-1}(n) \\ 1 & 2 &\cdots & n\\ \end{array}\right)\]

と書き直すことができるので、

\[ a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}\cdots a_{n\sigma(n)} \]

\[ a_{\sigma^{-1}(1)1}a_{\sigma^{-1}(2)2}\cdots a_{\sigma^{-1}(n)n} \]

と書き直すことができます。

また、\(\mathrm{sgn}(\sigma^{-1}) = \mathrm{sgn}(\sigma)\) が成り立ちます。ですから、行列式の定義を、

\[\det(A)=\sum_{\sigma^{-1} \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma^{-1})a_{\sigma^{-1}(1)1}a_{\sigma^{-1}(2)2}\cdots a_{\sigma^{-1}(n)n} \tag{2}\\ \qquad\text{ただしここで}\, S_n \,\text{は}\,n\,\text{次の置換の集合}\]

と書き直すことができます。

さらにまた、\(\tau =\sigma^{-1}\) とおくことにより、

\[\det(A)=\sum_{\tau \in S_n} \mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a_{\tau(n)n} \tag{3}\\ \qquad\text{ただしここで}\, S_n \,\text{は}\,n\,\text{次の置換の集合}\]

と書き直すことができます。

ところでこの \((3)\) 式の各項

\[ \mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a_{\tau(n)n} \]

を見ると、そもそもの行列式の定義 \((1)\) 式と比べてみれば、行と列の役割を入れ替えてから計算をしていることがわかります。

言いかえるとこの式は \(A\) の転置行列 \({}^t \! A\) の行列式を計算していることになります。 よって次の命題が証明されました。

命題

転置行列の行列式はもとの行列の行列式と等しくなります。 つまり \(n\) 次の正方行列 \(A\) に対して、 \[\det(A) = \det({}^t \! A)\] が成り立ちます。

列に関する性質と行に関する性質の関係

これから先、列に関して行列式の性質を調べていきます。

転置行列の行列式はもとの行列の行列式と等しくなるのですから、行列式の性質で、列に関して成り立つことは行に関しても成り立つということに注意しておきましょう。

多重線形性と交代性

\(2\) 次、\(3\) 次の行列式はそれぞれ \(2\) 重線形性、\(3\) 重線形性線と呼ばれる性質を持っていました。 また、交代性と呼ばれる性質も持っていました。

では、ここで、\(n\) 次行列に対して定義した行列式にも同じような性質があるのか調べてみることにしましょう。

そのために、ここでは \(n\) 次の正方行列は \(n\) 次の列ベクトルを横に \(n\) 個並べたものと考えることにします。つまり \(n\) 次の行列

\[ A = \left( \begin{array}{cccc} a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\ a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn } \end{array} \right)\]

を、

\[\begin{align} A &=\left(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n\right)\\[6pt] &\text{ただしここで}\quad \boldsymbol{a}_1 = \left(\begin{array}{c}a_{11}\\ a_{21}\\ \vdots\\ a_{n1}\end{array}\right),\, \boldsymbol{a}_2 = \left(\begin{array}{c}a_{12}\\ a_{22}\\ \vdots\\ a_{n2}\end{array}\right),\cdots,\, \boldsymbol{a}_n = \left(\begin{array}{c}a_{1n}\\ a_{2n}\\ \vdots\\ a_{nn}\end{array}\right) \end{align}\]

のように区分けして考えます。そして、 \(\det(A)\)\(\det(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) と書くことにし、\(n\) 個の列ベクトル \(\boldsymbol{a}_1,\; \boldsymbol{a}_2,\ldots,\; \boldsymbol{a}_n\) で決まる数と思うことにします。

多重線形性 (\(n\) 重線形性)

ここでは \(\det(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) は 多重線形性をもつことを確認します。

定理

\(\det(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) は 多重線形性(各列について線形である性質)をもちます。 つまり、

  1. \(\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) +\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n)\)

  2. \(\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,r\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)=r\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n)\)

が成り立ちます。

証明

\[\boldsymbol{a}_1 = \left(\begin{array}{c}a_{11}\\ a_{21}\\ \vdots\\ a_{n1}\end{array}\right), \boldsymbol{a}_2 = \left(\begin{array}{c}a_{12}\\ a_{22}\\ \vdots\\ a_{n2}\end{array}\right),\cdots, \boldsymbol{a}_n = \left(\begin{array}{c}a_{1n}\\ a_{2n}\\ \vdots\\ a_{nn}\end{array}\right),\: \boldsymbol{a}'_j = \left(\begin{array}{c}a'_{1j}\\ a'_{2j}\\ \vdots\\ a'_{nj}\end{array}\right), \boldsymbol{a}''_j = \left(\begin{array}{c}a''_{1j}\\ a''_{2j}\\ \vdots\\ a''_{nj}\end{array}\right)\]

と書くことにしておきます。

  1. まず、

    \[ \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \]

    \(n\) 次の行列

    \[A = \left( \begin{array}{cccccc} a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a'_{1j}+a''_{1j} & \cdots & a_{ 1n } \\ a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a'_{2j}+a''_{2j} & \cdots& a_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & & \vdots & &\vdots\\ \vdots & \vdots & & \vdots & &\vdots\\ a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a'_{nj}+a''_{nj} & \cdots& a_{ nn } \end{array} \right) \]

    に対する \(\det(A)\) ですから、\((1)\) 式の定義(行列式のそもそもの定義)を使うと、

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&= \sum_{\tau \in S_n} \mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots (a'_{\tau(j)j } +a''_{\tau(j)j }) \cdots a_{\tau(n)n} \\ & \qquad\text{ただしここで}\, S_n \,\text{は}\,n\,\text{次の置換の集合} \end{align}\]

    となります。
    この式の各項は分配法則によって

    \[\begin{align}\mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots (a'_{\tau(j)j } +a''_{\tau(j)j }) \cdots a_{\tau(n)n} &=\mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a'_{\tau(j)j }\cdots a_{\tau(n)n}\\ &+\mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a''_{\tau(j)j } \cdots a_{\tau(n)n} \end{align}\]

    と変形できますから

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&= \sum_{\tau \in S_n} \mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a'_{\tau(j)j } \cdots a_{\tau(n)n} \\ &+\sum_{\tau \in S_n} \mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a''_{\tau(j)j } \cdots a_{\tau(n)n} \\ &=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \\ &+\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

    となり、定理の主張が成り立つことがわかります。

  2. 1.と同様に考えて証明できます。

    \[ \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,r\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\]

    を 行列式の定義 \((1)\) 式に従って計算する時に現れる各項について、

    \[\begin{align}\mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots (ra_{\tau(j)j }) \cdots a_{\tau(n)n} &=r\left(\mathrm{sgn}(\tau)a_{\tau(1)1}a_{\tau(2)2}\cdots a_{\tau(j)j }\cdots a_{\tau(n)n}\right)\\ \end{align}\]

    が成り立つことからほぼ明らかでしょう。

交代性

ここでは \(\det(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) は 交代性をもつことを確認します。

定理

\(\det(\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) は 交代性(列の順番を置換 \(\tau\) で入れかえると\(\mathrm{sgn}(\tau)\) 倍される性質)をもちます。 つまり、\(n\) 次の置換 \(\tau\) に対して、

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_{\tau(1)},\boldsymbol{a}_{\tau(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\tau(n))})&=-\mathrm{sgn}(\tau)\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

が成り立ちます。

証明

\(\det(\boldsymbol{a}_{\tau(1)},\boldsymbol{a}_{\tau(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\tau(n)})\)\(\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\) を定義にしたがってよく見比べてみます。そのために、

\[ \tau=\left(\begin{array}{c} 1 & 2 & \cdots & n\\ \tau(1) & \tau(2) & \cdots & \tau(n) \end{array}\right) =\left(\begin{array}{c} 1 & 2 & \cdots & n\\ k_1 & k_2 & \cdots & k_n \end{array}\right) \]

とあらわしておきます。(\(k_1, k_2, \cdots ,k_n\) を登場させたのは、以下の議論で数式中に現れる添字を見やすくするためです。それ以上の意味はありません。)

正方行列 \((\boldsymbol{a}_{\tau(1)},\boldsymbol{a}_{\tau(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\tau(n)})\) の第 \(1\) 列 は \(\left(\begin{array}{c}a_{1k_1}\\a_{2k_1}\\ \vdots \\a_{nk_1}\\ \end{array}\right)\)、第 \(2\) 列は \(\left(\begin{array}{c}a_{1k_2}\\a_{2k_2}\\ \vdots \\a_{nk_2}\\ \end{array}\right)\)、…、第 \(n\) 列は \(\left(\begin{array}{c}a_{1k_n}\\ a_{2k_n}\\ \vdots \\ a_{nk_n} \end{array}\right)\) ですから、行列式の定義 \((3)\) 式より

\[\det(\boldsymbol{a}_{\tau(1)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\tau(n))}) =\sum_{\rho \in S_n}\mathrm{sgn}(\rho)a_{\rho(1)k_1}a_{\rho(2)k_2}\cdots a_{\rho(n)k_n} \tag{4}\]

とあらわされます。

同様に、行列式の定義 \((3)\) 式より

\[\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)=\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(1)1}a_{\sigma(2)2}\cdots a_{\sigma(n)n} \tag{5}\]

となっています。

この \((5)\) 式 と \((4)\) 式との食い違いを考えてみます。

まず、どんな置換 \(\sigma\) も上の段の並びを \(k_1,k_2,\cdots, k_n\) の順にすれば、

\[\sigma=\left(\begin{array}{c} k_1 &k_2 & \cdots & k_n\\ \sigma(k_1) & \sigma(k_2) & \cdots & \sigma(k_n) \end{array}\right) \]

と書けるはずです。ですから、\((5)\) 式の各項

\[ \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(1)1}a_{\sigma(2)2}\cdots a_{\sigma(n)n}\]

\[ \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(k_1)k_1}a_{\sigma(k_2)k_2}\cdots a_{\sigma(k_n)k_n} \]

と書き直すことができます。

また、証明の始めで

\[k_1=\tau(1),k_2=\tau(2),\cdots,k_n=\tau(n)\]

と置くことにしたのですから、さらに、\((5)\) 式 は

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) &=\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(k_1)k_1}a_{\sigma(k_2)k_2}\cdots a_{\sigma(k_n)k_n}\\ &=\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(\tau(1))k_1}a_{\sigma(\tau(2))k_2}\cdots a_{\sigma(\tau(n))k_n}\\ &=\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma\tau(1)k_1}a_{\sigma\tau(2)k_2}\cdots a_{\sigma\tau(n)k_n}\tag{6} \end{align}\]

と変形できます。ここで、

\[\mathrm{sgn}(\tau)\mathrm{sgn}(\tau)=1,\mathrm{sgn}(\sigma)\mathrm{sgn}(\tau)=\mathrm{sgn}(\sigma\tau)\]

であることを用いると、さらに、

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) &=\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma\tau(1)k_1}a_{\sigma\tau(2)k_2}\cdots a_{\sigma\tau(n)k_n}\\ &=\mathrm{sgn}(\tau)\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma)\mathrm{sgn}(\tau)a_{\sigma\tau(1)k_1}a_{\sigma\tau(2)k_2}\cdots a_{\sigma\tau(n)k_n}\\ &=\mathrm{sgn}(\tau)\sum_{\sigma \in S_n} \mathrm{sgn}(\sigma\tau)a_{\sigma\tau(1)k_1}a_{\sigma\tau(2)k_2}\cdots a_{\sigma\tau(n)k_n} \tag{7} \end{align}\]

と変形できます。

ここで、\(\sigma\)\(S_n\) のすべての置換にわたって変化するとき、\(\sigma\tau\)\(S_n\) のすべての置換にわたって変化することに注意して、\(\rho = \sigma\tau\) とおくと、さらに

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) &=\mathrm{sgn}(\tau)\sum_{\rho \in S_n} \mathrm{sgn}(\rho)a_{\rho(1)k_1}a_{\rho(2)k_2}\cdots a_{\rho(n)k_n} \tag{8} \end{align}\]

となります。

\((4)\) 式と \((8)\) 式を見比べると、この定理の主張が成り立つことがわかります。

(証明終わり)

いま証明した定理から次のことが導かれます。

定理の系

  1. 正方行列 \(A = (\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) のどの2列を入れかえても行列式の値は \(-1\) 倍されます。つまり、

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_j\cdots,\boldsymbol{a}_i,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=-\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

    が成り立ちます。

  2. 正方行列 \(A = (\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) のいずれか2列が等しければ行列式の値は \(0\) です。つまり、

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_i,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=0 \end{align}\]

    が成り立ちます。

証明

  1. は直前の定理で置換 \(\tau\) が互換である場合を考えれば明らかです。
  2. \(i\) 行と第 \(j\) 行がともに \(\boldsymbol{a}_i\)ならば、第 \(i\) 行と第 \(j\) 行を入れ替えて考えれば 1.より、

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_i,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=-\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_i,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

    が成り立ちます。 これより直ちに、

    \[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_i,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=0 \end{align}\]

    であることがわかります。

補足:実は、ここで紹介した定理、定理の系の 1、定理の系の 2 はすべて同じ内容をあらわしています。 つまり、 この3つの主張のどれからでも、残りの主張を導くことができます。

さらに交代性の定理から次を導くことができます。

定理の系

正方行列 \(A = (\boldsymbol{a}_1\; \boldsymbol{a}_2\;\ldots\; \boldsymbol{a}_n)\) のある列にほかの列の定数倍を足しても行列式の値は変わりません。つまり、

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i + r\boldsymbol{a}_j\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

が成り立ちます。

証明

多重線形性と、2つの列が同じとき \(\det\) の値は \(0\) になることに注意すると、

\[\begin{align} \det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i + r\boldsymbol{a}_j\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) &=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i \cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) +\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots, r\boldsymbol{a}_j\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\\ &=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i \cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) +r\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots, \boldsymbol{a}_j\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\\ &=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)+0\\ &=\det(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_i\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\\ \end{align}\]

となることがわかります。

多重線形性と交代性をもつ関数は行列式以外にあるのか?

次のような問題を考えることにします。

問題

\(n\) 個の \(n\) 次列ベクトル

\[\boldsymbol{a}_1 = \left(\begin{array}{c}a_{11}\\ a_{21}\\ \vdots\\ a_{n1}\end{array}\right), \boldsymbol{a}_2 = \left(\begin{array}{c}a_{12}\\ a_{22}\\ \vdots\\ a_{n2}\end{array}\right),\cdots, \boldsymbol{a}_n = \left(\begin{array}{c}a_{1n}\\ a_{2n}\\ \vdots\\ a_{nn}\end{array}\right)\]

によって決まる関数 \(F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\) があるとします。

\(F\) が以下のように \(n\) 重線形性(つまり各列について線形であるという性質)

\[\begin{align} F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) +F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n)\\ F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,r\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=rF(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n) \end{align}\]

と交代性(列の順番を置換 \(\sigma\) で入れかえると \(\mathrm{sgn}(\sigma)\) 倍される性質)

\[\begin{align} F(\boldsymbol{a}_{\sigma(1)},\boldsymbol{a}_{\sigma(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\sigma(n))})&=\mathrm{sgn}(\sigma)F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

を持つとしたら、\(F\) はどんな形をしているのでしょうか?

実は、この問題は以前 \(3\) 次の行列式を3重線形性と交代性から導いたときと同様にして解決することができます。

ではさっそくやってみることにしましょう。

\(n\) 項単位ベクトル \(\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_2,\ldots,\boldsymbol{e}_n\) を用いると、各 \(\boldsymbol{a}_i\:(i = 1,2,\ldots,n)\) について、

\[\begin{align} \boldsymbol{a}_i&=a_{1i}\boldsymbol{e}_1+a_{2i}\boldsymbol{e}_2+\cdots+a_{ni}\boldsymbol{e}_n\\ &=\sum_{k_i=1}^na_{k_ii}\boldsymbol{e}_k \end{align}\]

とあらわされます。(ここでは後の計算のことを考えて、\(\boldsymbol{a}_i\) の式で 和を取るとき、\(a_{*\star}\)の行番号をあらわす変化できる添字を \(k_i\) としました。そうしておけば、他の \(\boldsymbol{a}_j\) の式で和を取るときの添字と区別できるからです。)

これらのことを頭に入れて、多重線形性を用いると、\(F\) について次のような計算ができます。

\[\begin{align} F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) &=F\left(\sum_{k_1=1}^na_{k_11}\boldsymbol{e}_{k_1},\sum_{k_2=1}^na_{k_22}\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\sum_{k_n=1}^na_{k_n n}\boldsymbol{e}_{k_n}\right)\\[6pt] &=\sum_{k_1=1}^n a_{k_1 1}F\left(\boldsymbol{e}_{k_1},\sum_{k_2=1}^na_{k_22}\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\sum_{k_n=1}^na_{k_n n}\boldsymbol{e}_{k_n}\right)\\[6pt] &=\sum_{k_1=1}^n a_{k_1 1}\sum_{k_2=1}^n a_{k_2 2}F\left(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\sum_{k_n=1}^na_{k_n n}\boldsymbol{e}_{k_n}\right)\\[6pt] &= \qquad \cdots\cdots\cdots\cdots\cdots\cdots\cdots\cdots\\ &=\sum_{k_1=1}^n a_{k_1 1}\sum_{k_2=1}^n a_{k_2 2}\cdots \sum_{k_n=1}^n a_{k_n n} F\left(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{e}_{k_n}\right)\\[6pt] &=\sum_{k_1=1}^n\sum_{k_2=1}^n\cdots\sum_{k_n=1}^n a_{k_1 1}a_{k_2 2}\cdots a_{k_n n} F\left(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{e}_{k_n}\right)\\[6pt] &=\text{可能な}\, k_1,k_2,\ldots,,k_n\,\text{の組すべてに対する}\\ &\qquad a_{k_1 1}a_{k_2 2}\cdots a_{k_n n}F(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{e}_{k_n})\,\text{の和} \end{align}\]

となります。

ここで、交代性を用いると、 \(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\ldots,\boldsymbol{e}_{k_n}\) のどれか2つが同じならば \(F(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\ldots,\boldsymbol{e}_{k_n}) = 0\) なので、

\[\begin{align} &F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\\ &=k_1,k_2,\cdots,k_n \,\text{がすべて異なるときの}\\&\qquad a_{k_1 1}a_{k_2 2}\cdots a_{k_n n}F(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{e}_{k_n})\,\text{の和}\\ \end{align}\]

となります。

ところで \(k_1,k_2,\cdots,k_n\) がすべて異なるということは、これらの並びに対応するある \(n\) 次の置換

\[\sigma=\left(\begin{array}{c} 1 &2 & \cdots & k\\ k_1 & k_2 & \cdots & k_n \end{array}\right) \]

があるということです。そしてこの \(\sigma\) を使うと \(F\) は交代性を持っているのですから

\[ F(\boldsymbol{e}_{k_1},\boldsymbol{e}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{e}_{k_n})=\mathrm{sgn}(\sigma)F(\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n})\]

と書き直すことができます。

このことより、さらに

\[\begin{align} &F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\\[6pt] &=\sum_{\sigma \in S_n}a_{\sigma(1)1}a_{\sigma(2)2}\cdots a_{\sigma(n)n}\mathrm{sgn}(\sigma)F(\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n})\\[6pt] &=\left\{\sum_{\sigma \in S_n}\mathrm{sgn}(\sigma)a_{\sigma(1)1}a_{\sigma(2)2}\cdots a_{\sigma(n)n}\right\}F(\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n})\\[6pt] &=\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)F(\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n}) \end{align}\]

と変形することができます。

\(F(\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n})\)\(F\) によって決まっている何らかの定数ですから、\(F\)\(n\) 個の \(n\) 次の列ベクトル \((\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\) (もしくは \(n\) 次の正方行列 \(A =(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\))の関数と考えた場合、\(F\)\(\det\) の定数倍であるいうことになります。

以上で次の定理が証明されたことになります。

定理

\(n\) 個の \(n\) 次列ベクトル \(\boldsymbol{a}_1 ,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n\) によって決まる関数 \(F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\)\(n\) 重線形性(各列について線形)

\[\begin{align} F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j+\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}'_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n) +F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}''_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n)\\ F(\boldsymbol{a}_1,\cdots,r\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)&=rF(\boldsymbol{a}_1,\cdots,\boldsymbol{a}_j,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\quad(j=1,2,\cdots,n) \end{align}\]

と交代性(列の順番を置換 \(\sigma\) で入れかえると\(\mathrm{sgn}(\sigma)\) 倍される性質)

\[\begin{align} F(\boldsymbol{a}_{\sigma(1)},\boldsymbol{a}_{\sigma(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\sigma(n))})&=\mathrm{sgn}(\sigma)F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \end{align}\]

という性質を持つならば、\(F\)\(\det\) の定数倍です。 つまり、ある定数 \(c\) があり、

\[F(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) =c\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\]

が成り立ちます。

補足:行列式の特徴づけ
これまでの説明や上の定理から、\(\det(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\) は多重線形性と交代性をもつ関数のうち、\((\boldsymbol{e}_{1},\boldsymbol{e}_{2},\cdots,\boldsymbol{e}_{n})\) に対する値が \(1\) であるものということになります。

行列の積と行列式

定理

2つの正方行列の積の行列式は それぞれの行列式の積に等しくなります。つまり、2つの \(n\) 次行列 \(A,B\) に対して、

\[\det(AB)=\det(A)\det(B)\]

が成り立ちます。

証明

\(A\) を列ベクトルで区分けして、\(A=(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n)\) としておくと、

\[\begin{align} AB &=(\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_n) \left( \begin{array}{cccc} b_{ 11 } & b_{ 12 } & \ldots & b_{ 1n } \\ b_{ 21 } & b_{ 22 } & \ldots & b_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ b_{ n1 } & b_{ n2 } & \ldots & b_{ nn } \end{array} \right)\\[6pt] &=\left(\sum_{k_1=1}^n\boldsymbol{a}_{k_1}b_{k_1 1},\sum_{k_2=1}^n\boldsymbol{a}_{k_2}b_{k_2 2},\cdots,\sum_{k_n=1}^n\boldsymbol{a}_{k_n}b_{k_n n}\right) \end{align}\]

であるので、\(\det\) の多重線形性と交代性を用いれば、

\[\begin{align}\det(AB) &=\det\left(\sum_{k_1}\boldsymbol{a}_{k_1}b_{k_1 1},\sum_{k_2}\boldsymbol{a}_{k_2}b_{k_2 2},\cdots,\sum_{k_n}\boldsymbol{a}_{k_n}b_{k_n n}\right)\\[6pt] &=\text{可能な}\, k_1,k_2,\ldots,,k_n\,\text{の組すべてに対する}\\[6pt] &\qquad \det(\boldsymbol{a}_{k_1},\boldsymbol{a}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{a}_{k_n})b_{k_1 1}b_{k_2 2}\cdots b_{k_n n}\,\text{の和}\\[6pt] &=k_1,k_2,\cdots,k_n \,\text{がすべて異なるときの}\\[6pt] &\qquad \det(\boldsymbol{a}_{k_1},\boldsymbol{a}_{k_2},\cdots,\boldsymbol{a}_{k_n})b_{k_1 1}b_{k_2 2}\cdots b_{k_n n}\,\text{の和}\\[6pt] &= \sum_{\sigma \in S_n}\det(\boldsymbol{a}_{\sigma(1)},\boldsymbol{a}_{\sigma(2)},\cdots,\boldsymbol{a}_{\sigma(n)})b_{\sigma(1) 1}b_{\sigma(2) 2}\cdots b_{\sigma(n) n}\\ &= \sum_{\sigma \in S_n}\mathrm{sgn}(\sigma)\det(\boldsymbol{a}_{1},\boldsymbol{a}_{2},\cdots,\boldsymbol{a}_{n})b_{\sigma(1) 1}b_{\sigma(2) 2}\cdots b_{\sigma(n) n}\\ &= \det(\boldsymbol{a}_{1},\boldsymbol{a}_{2},\cdots,\boldsymbol{a}_{n})\sum_{\sigma \in S_n}\mathrm{sgn}(\sigma)b_{\sigma(1) 1}b_{\sigma(2) 2}\cdots b_{\sigma(n) n}\\ &= \det(\boldsymbol{a}_{1},\boldsymbol{a}_{2},\cdots,\boldsymbol{a}_{n})\det(B)\\[6pt] &=\det(A)\det(B) \end{align}\]

となることがわかります。
(証明終わり)

まとめ

ここでは、$2,3 $ 次の場合の行列式の式の形を参考に、一般の \(n\) 次の行列式を定義しました。

転置行列の行列式ともとの行列の行列式は等しくなります。

行列式では、列に関する性質は行に関しても成り立ち、行に関する性質は列に関しても成り立ちます。

行列式は多重線形性と交代性と呼ばれる性質を持っています。

多重線形性と交代性をもつ関数は行列式の定数倍に限ります。

2つの正方行列の積の行列式は それぞれの行列式の積に等しくなります。

$2$ 次と $3$ 次の行列式 行列式の展開